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歯の外傷治療と小児の歯内療法にかかわる本日の問いと仮説的推論  宮新 美智世

根未完成歯へのポストコアはどうする?

Q; 根未完成歯のアペキシフィケーション後に根管充填を行いました。まだ、9歳で永久歯咬合は未完成です。(第二大臼歯の咬合関係が確立していません) 今後のポストコアはどうしたら良いでしょうか。

 

A; 現状でポストコアを立てることはお勧めしません。またぶつける可能性がある年齢であることと、破折するのはポストの最深部よりも根尖寄りをふくむ歯冠歯根破折になる危険性があり、保存不可能になりかねないからです。咬合関係や、歯冠と歯肉との位置関係も変化が続く時期でもありますから、最終的で長期的に安定した形態を作るのは、18歳以上(身長増加停止後)をすすめてきました。

現在の年齢においては アクセス窩洞根未完成歯に対し、スーパーボンドを接着性レジンとした状態で、フロアブルCR充填を行います。この処置を行っている場合、外力による破折が起きても歯冠部に限局して、歯根側の破折が浅いことを、ウシの歯を用いた実験によって確認してあります。(臨床例でもそのパターンでの破折が観察されています。)

宮新美智世 他. 象牙質接着システムとレジンによる修復が根管治療後の幼若永久歯の破折に与える影響に関する実験的研究. 小児歯科学雑誌 36 (5): 777-789, 1998

上下顎の咬合接触は極力、本人の歯質内にとどめて、CRの中に設定しないことが推奨されています。(上記研究において、実験的には、CRに外力をくわえると、本来の歯面に外力をくわえた場合より、少ない外力で 破折が生じました) また、隣接する切歯より咬合負担が少なめにすることを薦めます。

咬合関係は、

① 咬頭嵌合位においては、咬合紙1枚が軽く抜ける程度、または対側同名歯の咬合紙印記面積より少なめにする。

②側方ならびに前方滑走においては、最小限のガイド面積とする。念のため唇側に指をあてて、滑走時の動揺が、健全歯よりも少ないことを確認しておく。

③咬合接触は極力、本人の歯質内にとどめて、CRの中に設定しない。

 

その他、醜いアヒルの子の時期に相当する年齢の患者さんですから、これから正中離開が改善する時期に当たりますが、注意すべき点があります。それは、外傷受傷既往歯は 、歯槽骨を喪失している症例が多いことが原因しているのか、長期的には以下の点に注意を要します。

①受傷している頻度が高い上顎中切歯は唇側に移動するリスクをもっていること。

②側切歯は口蓋近心側に転位してくるリスクがあること。

もし当該歯の動揺が亢進したり、2番が舌側に回り込むことがみえたら、舌側歯頚部に矯正後保定のような長期用固定を行う場合もあると推察しています。