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歯の外傷治療と小児の歯内療法にかかわる本日の問いと仮説的推論  宮新 美智世

保母さん・看護師さんからいただいたご質問とお返事

回答済

 

質問1

外傷後の消毒はどの位の期間必要でしょうか。歯科医師により1週間や2週間とばらつきがあります。外傷の程度によって変わるのか教えていただきたいです。

質問2

受傷後、歯の色が変わるというのは歯のどこかが折れていたりするためでしょうか。色が悪くなった場合は元に戻りますか。

質問3

やはり子どもの歯を見てもらう際には、小児歯科の方が良いのでしょうか?

質問4

転倒で前歯が陥入した場合、その後永久歯の生え変わりの時に、乳歯の脱落(抜ける)のは難航しますか。ぐらついているのに、なかなか抜け落ちてこないため、外傷による陥入が影響しているせいでしょうか。歯科医院へ受診し、抜歯してもらうなど相談したほうがよいのでしょうか。またその後の永久歯が変な位置に生えてきたり、向きが曲がって生えてきたりなどのリスクもあるとお話がありましたが、それに対しての治療方法はあるのでしょうか。

質問5

以前歯のかけがとても小さく薄い部分なのでレジン修復してもまたすぐ欠けるから必要無と言われた事例があったのですが、そういったことありますか。技術の問題でしょうか。歯の層のレベルでしょうか。

質問6

咬傷は当日内に受診(Q&Aより)とのことですが、120名の園児を預かっており1日平均3~5件噛みつきが発生しています。全て受診となると現実的ではないように感じてしまいます。(噛みつかせない保育の検討は勿論ですが…)

質問7

受傷直後に動揺ありと感じ受診しても、歯科では問題なしと言われることがあります。特に1才児にこういったことが多いように感じているのですが、生えて間もない乳歯は揺れやすいなどありますでしょうか。

未回答

 

質問8

歯根破折:ぐらつきもなく、痛がる様子がなくても歯を受傷したら病院へ受診をした方がいいのでしょうか。

質問9

上唇小帯が切れた場合、歯にぐらつきが無くても必ず保育園で受診が必要でしょうか。ご連絡はして保育を続けお迎え時様子見て下さいと伝える対応でも良いでしょうか。

質問10

自分で転び前歯を脱臼し結果麻酔をして前歯上二本を抜きました。前歯を折るお子さんが多いのは何故ですか。

質問11

歯髄が死ぬと永久歯にはどのような影響がありますか。

質問12

怪我とは関係ないのですが、2歳児の反対咬合は、早めに受診をしたほうがよろしいのでしょうか。

質問13

前歯がすきっ歯で心配と相談を受けることがあります。見ると上唇小帯が少し大きいようにも見えます。歯科で相談を促しましたが、上唇小帯が大きい場合の影響や受診・治療の目安などありますでしょうか。

 

 

 

 

 

回答

回答

質問1-3 ぶつけて①歯と歯肉(歯茎)の境から出血がみられるとき、②歯にヒビや割れたかな と思われる欠失が疑われた場合。受傷直後は歯の揺れもなく、出血すらない場合もあります。子どももビックリしていて痛みに気づかないような場合もあるようです。③見かけは何ともないと見えても、30分くらいたってからもう一度触ってみていたがるようなら受診です。歯のケガは反日から1日だつと最も痛くなります。園から帰宅したのちに痛くなったとか、食事中に歯で噛んでみて初めて痛みに気づいて子どもが泣き始めることがありえます。トラブル防止のためにも、帰宅する前には受診を済ませることはお勧めです。

歯と歯茎から血が出るほどの外力は、瞬間的にはかなり歯を傾けてしまうほどのケガをしているから生じるのです。唇や下の歯の働きで、すぐ元の位置に戻るので、歯がずれたことについて気が付くことは難しくなっています。

 

質問4 小帯が大きく切れても出血が数分で止まり、子どもが話すことに違和感がなければ傷は自然になおるでしょう。ただし、傷が消えるまでには数日かかりますので、熱い食物、冷たい食物はしみるでしょう。早く治したければ、氷をなめると唇の腫れがふせげます。幼くてむりなら、上唇から鼻下にかけて水を付けたタオルを当てるのも予防策になります。あてたり外したりを繰り返すのでも結構です。

10分ほどやってみて腫れてこなければ休んでいいでしょう。少し腫れ始めてからでも効果はでます。

質問5 嚙みついたときなら、かまれた子どもの傷を水道水の流水かシャワーで数分以上洗ったのち、当日内には外科に見せた方がよいでしょう。咬んだ方の児を責めることなく、行動が起きた機序については成人側が十分に配慮し対策する必要があります。

顔面を咬まれたのであれば、同じく流水で洗って、歯科または口腔外科を受診された方がよいと思います。犬による咬傷が危険なように、ヒトの咬傷も不潔です。跡を残さないためには初動が大切です。

 

質問6 、乳歯の場合は、歯をもとに戻してもよい条件(再植条件)が限られますので、歯を植えなおす(再植)のは主に永久歯を対象とすると考えてください。歯が落ちたり欠けたりしたとおもったときは、歯科医院にぜひ持参してください。

アレルギー素因が不明な児の抜けた歯(脱落歯)を牛乳に浸漬することはお勧めできません。

歯科医院にたどり着ける時間が1時間以内であれば、ラップでしっかりと空気を入れないように包むか、なければ薄いポリ袋でも可能です。常温で最適なのは、HBSS(+)(細胞保存液)で24時間歯を崩壊から守ります。牛乳や歯の保存液ティースキーパーネオはやや性能がおちます。

 

質問7 出血の止め方は一般的に圧迫が基本であることに、口腔内も変わりません。

子ども場合は、まず落ち着かせて、血圧を下げることが大切です。傷近くの圧迫止血など止血作業そのものが痛みを伴うので 得に幼児では困難でしょう。口の出血は唾液に混じることが有り、多量に見えやすい傾向があります。しかし、小児のケガで口内が出血した際に、よほど深く舌や唇を切断しない限りは、多量の出血になるリスクは低いので、血液を飲まないような工夫をすることを意識することをお勧めします。血液を飲むと1時間程経過後に嘔吐を誘発するといわれます。。特に、治療中に嘔吐しますと、嘔吐物が逆に気道に入ってしまうなどの危険性があるからです。血液と唾液が混じったものが、飲み込まれないようにするには、口元の痛くなさそうな部位で大きめのガーゼやタオルなどをくわえさせることです。

さらに歯は、上下の反対側の歯にあたる場合があり、止血しにくい場合があります。結局、止血が悪いなら傷が深いか範囲が広いことを意味するので、早めの受診が必要です。

 

質問8    歯根破折は受傷当初はぐらつきもなく、本人は痛がる様子がない場合があります。また、歯根破折には歯の周りの骨の骨折を伴う確率も高いものです。ただし、歯が損傷を受けた場合の痛みの有無を正確に判断するためには基準があるので、歯科医療者に診査させて、外傷を受けた歯なのか、抜け代わりが近くて揺れている乳歯なのかなどの相違を判断してもらうことが望ましいです。見かけでわかる部分は、歯肉と歯の境目の出血だと申し上げましたが、ちょっと見て見える出血はかなりひどい損傷を意味しており、損傷の詳細を正確に診断するためには数時間以内に歯科医師が見るのが最も正確な結果を得ることが出来ます。受診しないで判断できそうな兆候は、半日以後に痛くなり、揺れも歯ぐきや口唇の腫れあがるというものでしょう。歯根破折は、受傷後1週間以内に発見して治療を受けることが出来ると望ましい治り方が可能なので、保護者と受傷状況についての情報を共有して、口腔清掃を続け、数日中に歯科での検査を推奨することをお勧めします。

 

質問9   

歯のぐらつきについては、正常か異常かの判断は年齢と個性に応じた正確な診査を要するので、歯科を受診して診断してもらう必要があります。

保育園が受診させるのか、保護者が受診させるのかについては、当方はどのような取り決めでおられるのか状況がわからないためお答えができません。

「保護者が様子をみて」もわからない損傷が隠れているリスクがあり、安心はできません。質問8への回答や、お渡ししたアジェンダもご覧ください。時間をかけて、歯科で観察しつづけてはじめて、外傷の影響は明瞭になることをお忘れなく。

外傷の状況についての情報を保護者と共有して、口腔清掃をホームケアとして続けることは必須であり、数日中に歯科での検査を推奨することがお勧めですが、強要することはできません。受診しなければ、肉眼で見えない損傷がもし存在した場合は、進行を阻止できないので、合併症の発症率が高まるのことが予想されます。

 

質問10  

脱臼についておかきでしたから、質問後半は、前歯をケガする子が多いことの原因と解釈させていただきました。(もし、歯が折れる(破折)についてご質問なら、答えは、実は乳歯は見える破折(歯冠の破折)は比較的少ないことをお伝えします。揺れる(脱臼や歯根破折、歯冠歯根破折)の比率がやや高いです。)

 

歯のケガが起きる原因

0)幼児は頭が大きく、運動能力が未発達。

1)噛み合わせの不具合、出っ歯、開咬、口呼吸、鼻閉、鼻炎、口唇閉鎖不全

2)むし歯・ 歯周病

3)硬いものの食べる

4)外傷

   筋力低下・バランス感覚の低下・認知機能の低下・小脳障害

   喉頭鏡使用時

体調のコンディショニング-食事・運動・休養・睡眠の質的量的不足

5)歯ぎしり 

6)環境的な問題

7)安全教育不足-成人も小児自身も、危険の実態を学ぶ必要あり。

         精神散漫で粗野な行動パターンを改める(静謐を教える・静かな環境をつくる)

         外傷の処置・救急対応法を身に着ける

 

質問11   アジェンダにも書きましたが、乳歯の外傷が永久歯に与える影響とほぼ同じ害をもたらします。歯髄が死ぬと歯髄に細菌感染と炎症がおき、それが永久歯側に及ぶので、成長中の永久歯の発育を障害して形成不全をおこしたり、時に永久歯が死んでしまうことがある。骨が侵されて歯並びが悪くなることもあります。

                

質問12   2歳未満の児の反対咬合は、80%以上自然に正常化しますので、4歳までは経過を観察します。

ただし、鼻疾患や口呼吸がある場合は、歯並びを悪くしているリスクがありますから、治療を受けておくことがお勧めです。お話が分かるようになる4歳くらいになっても、異常が残っていたら、歯科で診査をうけて、治療をいつ行うのが望ましいのか診断してもらいます。正確な診査診断も、このころから可能になります。

反対咬合の治療時期は特徴に応じて、幼児期に治療したほうが良いパターンと、永久歯が生えた後に治療するのが有利なパターンの2つががあるので、その点を歯科で判断してもらうことがお勧めです。つまり、全ての歯並びの問題が、幼い時期に始めることが良いとは言えないのです。つまり、矯正治療のすべてにおいて、「早期治療が有利だ・良い」とは断定できません。歯並びの治療は、一生のうちいつでも受けることができますし、手遅れは在りません。治療に要する時間も負担も個人ごと、年齢ごとに様々なので、正確な診断をうけて、複数の治療計画の詳細を知って比較して、受験などのライフサイクルとの関係も考慮して、最もご本人と家族に適した時期と治療計画を選ぶのが良いでしょう。私費治療になるため保護者の経済的な都合もかかわってきます。本人が治療を受けたいとの要望が明瞭に確立し、経済的にも無理のないときに行うことを勧めます。特にご本人の理解と気持ちを大切にして、検討するのでよいかと思います。

 

質問13   乳歯や、生え始めの永久歯の前歯はすきっ歯であっても異常には入りません。発育中の幼児は前歯に隙間があるのも正常です。上唇小帯は幼少児であるほど、太く目立つ位置にありますが、これも正常な姿です。かつ、歯の隙間が空く原因が小帯であると単純な断定はできません。たとえば、隙間がもともとあるので、小帯もそこに居座っていることもあるのです。永久歯前歯の上4枚が生える8~9歳くらいになって、歯の隙間を閉じるための歯並び治療が開始される患者さんにおいては、小帯を移動させる(小帯切除)が行われることもあります。小帯切除だけで、歯の隙間が消失するわけでもないようですので、お気を付けください。小帯以外にも歯の隙間を開けてしまう原因が存在しているばあいもありますので、歯の隙間について歯科に相談されることは特に問題はありません。上唇小帯が大きくみえることそのものは何の問題もありません。仕上げ歯みがきの時に傷つけないように大人は気を付けてあげてください。

 

◎ 追加で頂いたご質問への回答

①脱落した歯が汚れていた場合は、どのように取り扱うと良いか?また、再生率はどの程度か?
②ティースキーパーの使用有無での、その後の経過にどの程度の差があるのか?

 

A 歯が抜け落ちた場合の対応のご質問としてまとめてお答えします。

歯には乳歯と永久歯があり、一般的に永久歯が抜けた場合は極力急いて元に戻します。これを再植と言います。乳歯の場合は、乳歯の周りで永久歯の芽(歯胚)が育っていますので、一度抜けてしまった乳歯をもとに戻してもよい条件(再植条件)が限られます。したがって、再植は永久歯を対象とすると考えてください。乳歯の場合は普通、再植を行うと永久歯の歯胚を痛めるリスクがあるので、再植をおこなわず、永久歯が無事はえるまで経過観察をおこなうか、必要であれば小児用義歯(保隙装置)を装着させます。

歯が落ちたり欠けたりしたとおもったときは、その歯もしくは歯と思われるかけらを歯科医院に持参してください。持参された歯の様子と、お子さんの口のエックス線所見を参考に、歯を再植してもよいかを歯科医師が検討します。

その場合、ひとたび歯が元の位置からぬけたのであれば、必ず細菌や異物によって汚染しています。といって、これを何かで簡単に除去することは不可能です。例えば水道水であらうと、歯の根の周りの細胞を殺してしまって、再植が成功しません。再植が成功する要因としては、汚染を歯科受診までに取り除くよりも、抜けた歯をどう保存して歯科医院に持参するか、のほうが肝心であることがわかっています。抜けた歯を牛乳に漬けておくのが良いなどという情報を耳にした方もおられるかもしれません。しかし、食物アレルギーを持つ小児が少なくない現在、牛乳を推奨することは注意を要します。もし、歯科医院にたどり着ける時間が1時間以内であれば、ラップ(なければ薄いポリ袋など)でぴっちり、空気を入れないように包んで持参してもよいと言われています。最適なのは、すぐ歯を元の位置に植えることですが、それができない場合は、HBSS(+)(Hanks’ balanced salt solution, 細胞保存用平衡緩衝液)溶液中であれば常温下で24時間、歯は抜けたて近い状態が保たれます。ついで、牛乳や歯の保存液ティースキーパーネオは冷蔵で12時間ほど保てます。なお、ご心配のおおい、歯が汚染されている点については、歯科医師が判断の上、より安全な剤品(HBSSなど)で洗浄いたします。

再植した後の経過への影響としては、上記のような推奨される対応を行えた場合、追加治療を適切に受けることができれば、ほぼ戻通りに一生機能することもできます。成功率を下げるのは、抜けた後に歯が乾燥したり薬剤に触れた場合や、抜けるときの機序が歯と周囲の組織に強いダメージ(骨折など)を与えた場合などです。たとえば、再植後の歯の寿命は乾燥時間が長くなるほど不利になり、抜けた歯の保存状態が不適切だと再植しても歯が生着すらしないという結果になります。

 

③ころんで歯をぶつけ、歯茎から血が出たり、上唇小帯から血が出た場合、歯の動揺がなくても必ず歯科に通院しています。保育園として、この対応で良いでしょうか?

④上唇小帯が切れた場合でも、一応受診しているが(歯のぐらつきが無いか等の確認のため)本来、上唇小帯が切れた場合は受診の必要性がないのか?

⑤上唇小帯が切れたり、歯茎から少量出血することがあるが、歯のぐらつきがなかったら受診が必要ないのか?

 

A 上唇小帯裂傷へのご質問としてまとめてお答えします。

  上唇小帯裂傷そのものは軽度に見えても、歯も同時に受傷している場合があり、ダメージの実態は肉眼的な歯の揺れや出血から判断できない者を含んでいるため、当日でなくても、可能なら数日内の受診をお勧めします。特に歯根が折れている場合は、歯科医院でX線診査を受けないと検出できませんし、次第に痛み出す性質の損傷であり、歯の生存に関わる損傷です。そのうえ、そもそも人は、最も痛い部位のことに気がむいて、それより痛みが軽い部分について意識できない場合があります。

上唇小帯裂傷は頻度が高いですが、たとえ小帯が大きく切れても出血時間はあまり長くないでしょう。ただし、本人が興奮していると唇もうごくことから、出血が遅延しますが、大きな血管はない部位なので、出血があるように見える場合も、唾液に血液が混じって出血に見えている場合もあります。まずは落ち着かせてあげましょう。傷だけに関しては数日で傷も浅くなりますが、当日は、熱い食物が染みたりするでしょうから、体温に近い食物が良いでしょう。鼻の下がはれる場合がありますから、上唇から鼻下にかけて水を付けたタオルを当てるのも予防策になります。あてたり外したりを繰り返すのでも結構です。ただし、「冷えピタ」類は冷却には至りませんし、アイスノン等の温度は低すぎます。10分ほどやってみて腫れてこなければ休んでいいでしょう。少し腫れ始めてからでも効果はでます。口内の傷は一般的に、氷をなめると腫れをふせげます。大人の噛み傷にも有効です。

 

 

⑥転倒などして歯が折れてしまった場合、どのような処置をするのが正しいのか(圧迫止血して、患部観察以外で)
また、折れた歯は、どのような状態にして、歯科クリニックに持っていけば良いのか(何か液体につけるのか、そのままの状態か)

 

全身に他により重度の損傷がないか、ご本人がぐたっとなっていないかをまず観察してください。その上で、口の中に異物がないか観察してください。異物がもしとりだせないと思ったら、慌てずに子どもを落ち着かせて、可能であれば大きめのガーゼやタオルなどを痛くなさそうな口角あたりでくわえさせてください。異物や血液を飲ませないためと、本人が出血を実感することをへらせて、精神的パニックをさけることができるからです。子どもが落ち着けないとすれば、痛みや問題が大きいことを意味するので受診を急ぐことがお勧めです。

歯のかけらなどがあれば拾って歯科医師に見せましょう。かけらだと思われる場合は、水道水を少しつけてポリ袋などに入れてご持参ください。2時間程度なら、水をつけなくてもほどんど問題はないと思います。ただし、もし歯全体が抜けている感じがしたら、上記の質問①②歯の脱落の際の保存のしかたに従ってください。何事でも迷う点は、まず歯科医院に電話をして、問い合わせるのもよいと思います。

現場の写真や本人の受傷部位をスマホやカメラで撮影しておくのは、のちに役に立つ可能性があります。事故の時間や現場の様子や、ケガに至った経緯などは教えていただきたく、損傷の機序を知る参考になります。またケガした部位は、受傷後時間が立っていない場合は、かえって診断できない損傷があり、これらは時間とともにいたみがでたり腫れる、内出血をおこすなどの変化でようやく把握されることがありますから、1日後すくなくとも1週間以内には、再度受診して受傷領域を検査してもらうことを勧めます。痛いのは受傷直後とは限りません。半日以上たってから急性炎症は強くなります。直後は痛くないとこたえていても、夕食時や夜間に、痛いと気づく場合があるのです。

 

⑦口腔内の出血がなかなか止まらない場合どうしたら良いか

 

出血の止め方は一般的に圧迫が基本であることに、口腔内も変わりません。

子ども場合は、まず落ち着かせて、血圧を下げることが大切です。本人が興奮していると唇もうごくことから、出血が遅延しますが、唇の中心部や舌下以外は大きな血管が少ない領域なので、出血があるように見える場合も、唾液に血液が混じって出血に見えている場合もあります。まずは落ち着かせてあげましょう。血を見て興奮する子もいるので、飲み込まないだけの長さのあるガーゼや小タオルを、ケガをしていない部位があったらその部分で、おしゃぶりみたいくわえさせておくのも一つです。これには、異物をのみこんだり、血液を飲まないような効果もあります。血液を飲むと1時間程経過後に嘔吐を誘発するといわれます。特に、外傷治療中に嘔吐しますと、嘔吐物が逆に気道に入ってしまうなどの危険性があるので医療者側からはさけてもらいたいのです。

そのほか、歯は脱臼してずれてしまっており、上下の反対側の歯にあたる場合があり、この場合は当たるたびに出血するので血が止まりにくいです。

 冷たい水をつけたタオルを薄いポリ袋に入れてあてるなど、冷シップは止血効果も期待できます。「ひやピタ」類は温度的に冷やす効果は期待できないので、気分的な紛らわし程度と考えます。拍動性や吹きあがる出血の場合は、とにかく圧迫のうえ、救急車を読んで口腔外科への搬送を依頼します。