子どもの歯と口のケガ これで安心!
子どもの歯と口のケガ
これで安心!
もし、転んで前歯が欠けたりが無かったら、かっこ悪くてもうパニック。ましてや、痛くて噛めないとせっかくのおやつとご馳走も楽しめません。こんなことが急に起きたら、どうしたらいいのでしょう。痛みが取れて、より良く治るための応急対応とホームケアをお伝えします。
1 歯のケガって何?
歯をケガすると →咬めない(機能障害)、 痛い(疼痛)、 見た目が悪い(審美性)
(1)歯科を受診するまえにまず見ましょう
脳外科受診が優先する様子: 顔色、歩き方、目の動きの異常、発熱、吐き気、頭痛、食欲低下、鼻水や鼻血の持続、顔が青い、記憶喪失、意識喪失
眼科へ : 目の動き異常、パンダの目、見えにくい
小児科へ: 顔が青い、体温の異常、腹部・胸部の痛み、発熱、食欲低下、乏尿、外傷性神経症
これらがなければ歯科受診かな? 歯が揺れたり 歯ぐきから血がにじんだり、触ると痛いときはまず電話
(2)記録を取りましょう
場所、状況、時刻など(写真撮影はできたら強く勧めます)
2 応急処置はどうしたら? 治療でどうなっていく?
受診の際の処置:けがの状態によって異なる(緊急度・重要度をよむ)
Golden time(経過良好な処置が可能な時間): 当日内の受診が望ましい
安心して食事ができることが回復の源 : 歯の位置の改善、破折部の被覆、固定、感染予防
*乳歯のケガ →後継永久歯の形成不全、萌出異常の監視
*永久歯のケガ→若い歯の発育能力の保存、喪失の防止と補償
(1)脱落 -緊急度は高い すぐ対応しよう!
よい保存、 すみやかな再植で予後良好(児童は60分以内で歯髄保存20%以上)
注意! 治療後の歯根吸収、 骨吸収、喪失あり
<応急処置>
抜けた歯は乾燥しないように保存、急いで歯科医院へ
保存方法: ラップ(1時間まで)、 ミルク、ティ-スキーパーネオTM(冷蔵で12時間まで)、
HBSS(+)(和光富士フィルム等)で48時間ほど常温下で良い状態を保てる。
大きい子なら歯を元の位置に戻して受診するのもよい(後で歯科医師が直します)
<治療>
再植して固定して 生着をはかる。歯内治療が必要になる場合もある。
(2) ゆれる、かむと痛い
受診の目安:歯と歯肉からの境界から出血する場合、かむと痛い場合
(脱臼、歯根破折、歯冠-歯根破折、歯槽骨骨折の可能性あり)
注意! 状態の判別には2週間以上を要することがある
早く治療を受けたほうが痛くなく安心して食事をとることができます。
<応急処置>
歯を飲み込まないように気をつけて歯科医院へ
<治療>
脱臼、歯根破折、歯冠-歯根破折:元に戻して固定(3日以内が望ましい)
乳歯の陥入:清掃をすれば再びはえることが多い(埋入した方向によっては元に戻して固定)
(3) 破折
<応急処置>
破片は水に浸けておく、1日以内に歯科医院へ
<治療>
破折部の被覆、露髄は部分歯髄切断(1週間以内)、亀裂はレジン被覆
→自分の歯もしくはレジン修復へ( 打診痛が消えるまでは仮修復)
(4) 切れた (口唇、小帯、 歯肉、 粘膜)
<応急処置>
清潔なガーゼ等で圧迫止血、
腫れを防ぐためできるだけ早く氷で30分冷やす、腫れてからは水とタオルで冷やす、
長いものは引抜かない
<治療>
外傷性刺青の予防、開いた傷は縫う(成長後に形成治療の可能性あり)、感染創は開放創にする、
wet dressing
*ホームケア*
清掃は、含嗽薬 や 緑茶(ほぐした綿棒や歯ブラシで掃除、うがい)
「仕上げはお母さん」の復活・ 甘い食物を減らし、バランスよい栄養と、睡眠
“ ケガは適切な対応で治せます。 応急処置とお手入れが大変有効です”
3 損傷の治癒過程 と 治療
1時間 唇の腫張、 急性炎症の開始 →止血、冷罨法、脱落歯の保存
1日目 歯肉の出血や内部出血、 唇の腫れ→破折の被覆
歯の変色(歯の内出血によるもの、後に消えることがある)
“感染しやすい2日間は、傷を良く洗いましょう。軽度の発熱があります(37度台)”
3日目 傷の最表層が治る
1週間 粘膜、 歯肉が治癒する
2週間 X線写真上で歯根破折や歯槽骨吸収が確認できる→これらがなく、動揺がなければ固定終了
埋入乳歯は再び萌える。皮膚や粘膜の内出血は消える。
1月目 X線写真上で歯根吸収が観察され始める。→歯髄の検査を行う
2か月 歯髄の生死が確認できる。 →炎症や歯髄壊死の場合は歯内療法(歯髄の治療)
骨折の治癒・根尖性歯周炎の明瞭化
3か月 歯根の破折部が治りはじめる。歯髄の石灰化がおきる場合あり(1年以内)
6か月 歯髄壊死、歯根吸収の多くが発見される
1年 定期管理必要期間。 異常所見のほとんどが発見される
5年 歯髄の保存治療を受けた場合は、定期診査を続ける
“ 乳歯の外傷は後継ぎの永久歯が生え変わるまで、 最低年2回定期検査を受けましょう”
4 けがの影響
“おくれて合併症がでるため、最低1年間の定期診査を受けましょう”
*歯冠の変色 :歯髄壊死の合併は60% 定期診査下におく
*軟組織の瘢痕化 :唇は数ヶ月で一度腫脹あり
*歯根吸収 :歯髄壊死や骨性癒着に併う。放置症例に進行型
*歯槽骨の吸収と再構成(10日~5週以内)
*亀裂による歯髄炎:目で見える亀裂は被覆する
*歯髄壊死、歯髄腔の石灰化異常(歯髄腔狭窄、歯髄の石灰化、骨の進入、歯髄腔の開大)
*永久歯の形成異常 (白・黄斑、歯冠や歯根の形成不全、歯髄腔狭窄)
乳歯埋入の63%、脱落73%、脱臼54%以下、歯根破折(整復固定)20% 抜歯57%
5 予防
どんなところでケガが起きているのか?→危険箇所を減らす
水道蛇口での打撲、噛り、歯がささる・・ビニールホースなどによるカバー
再外傷の予防
体育の授業、部活中のケガ
虐待監視の視点
障害児 :外傷の繰り返し、 いらつきと自傷癖→フェイスガードやマウスガード、ヘルメット
歯科定期検診のすすめ:形成不全やムシ歯は折れやすい、歯並びが悪いとぶつけやすい
“ケガの二次予防のためにも、成人までの定期診査と成長に合わせた調整をうけましょう”