形成不全を持つ第一大臼歯について
ー東京医科歯科大学歯科同窓会学術講演会におけるご質問にお答えしてー
形成不全を持つ第一大臼歯に遭遇された歯科医師は少なくないかと思います。
この柔らかい歯質をどのように扱うかは悩むところです。
特に冷刺激に違和感が出た後などではなおさらです。
生活歯であり、打診違和感や温水違和感が出ていなければ、歯髄を保存する方向で
対応します。柔らかい歯質を切削除去するのではなく、AIPCと同じ考え方で、液化した部分だけを取り除いて被覆し、軟かい歯質の歯髄側に修復象牙質を育てることを期待します。接着可能な健全エナメル質を持った歯であれば、ここに接着を行って被覆します。健全歯質がなければ、バンドを適合させてこれを枠としてセメントやボンドフィル、スーパーボンドなどを内部に入れて被覆します。
2か月から6か月の間隔で、被覆材料を除去して、軟化歯質に液化部分が生じるならこれだけを除去して、再被覆します。通常、次第に硬化することがおおいので、硬化した歯質はう蝕検知液でう蝕の混在をチェックしてから最終修復を行います。できれば歯を形成しないほうが安全ですので バンドや既成金属冠を用いて、永久歯咬合完成まで1年に1回は修復物をとって診査します。不可逆性歯髄炎と診断されなければ、永久歯咬合完成後に修復を行います。
ただし、もしこれらの被覆に要するクリアランスが得られない場合は、矯正治療を応用して、咬合挙上も検討します。
クインテッセンス出版の「歯の外傷で小児が来院したら」という本にも、形成不全歯、形態異常歯の修復法について書いております。参考にしてみてください。