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歯の外傷治療と小児の歯内療法にかかわる本日の問いと仮説的推論  宮新 美智世

外傷による脱落歯や脱臼歯の歯冠の清掃法について

 再植や脱臼固定の前に、歯冠を清掃することは感染予防のため、そして固定を成功させるために重要です。ただし歯根の歯根膜を保護するためには、歯冠はガーゼなどで歯垢を大まかにぬぐってからまずは再植や整復をおこなって、元の歯の位置に落ち着かせるのが良いでしょう。元の歯槽に戻ると、歯槽骨が骨折していなければ歯根膜が密着することで、再度抜こうとしても、動かないほどに安定することも多いです。この位置で歯根膜の安全が保たれた時点で固定を行い、歯周組織をいためることなく本格的な清掃を行います。

 固定のために接着する歯面部位は、整復や再植のあと、接着を阻害する付着物を除去する必要があります。振動や圧による違和感を感じさせないように、念のため当該歯を左指でつまんでおきながらタフトブラシで磨いたあとに、手用スケーラーで付着物の有無を確認し、硬い付着物はホワイトポイントなどを回転機器に着けずに手に持ってこそげとり、再度タフトブラシで仕上げます。水が不潔なのと圧力による汚物の侵入をさけるために、スリーウェイシリンンジは使えませんので、綿球に水道水か生理食塩水をつけてぬぐいながら行います。

固定後は、通常のブラッシングが終わった状態を目標に清掃します。全口腔が対象です。避けるべきは、切れた歯根膜や歯周組織に汚染を追加することと、歯肉辺縁などの軟組織を傷つけること、そして子どもに違和感や恐怖を感じさせることです。子どもの表情を見ながら、手用ブラシでの清掃または低速回転のブラシコーンが使用します。振動が子どもにとって不愉快でしょうから、指で歯を支える必要があります。この時、保護者や本人にも見せながら、ホームケアを指導します。急患での来院時などは時間がかぎられますでしょうから、当日のほかの時間帯や次の日など、日時を変えて指導時間を設けたり、模型等を用いての指導も可能です。

初診時から完全な指導終了やPMTCを目指す必要はありません。受傷当初は、緊張と疲労で必要最低限の指導にとどめることもあります。ただし、甘み制限などの食事指導は、けがを直すために必須ですので、必ず行います。清掃手技は、保護者と本人のできることを見極めながら、来院するたびに追加していくのでよいでしょう。そのためにも、傷の治り具合をみるために、と称して数日内には必ず来院させて、治癒状態を確認しつつ、追加の清掃や衛生指導を行います。

 

Labo M

小児の歯内療法、外傷と受傷歯の治療と

合併症への対応を教育・研究しています。

 (無料)

L

 

小児の歯内療法、小児の外傷と受傷歯の治療と長期経過観察、合併症への対応

その他、小児歯科学全般に興味のある皆様に、講義や実習(「天然歯根管模型」使用)、治療指導。研究指導などをボランティアで行っております。

 特に研修中の歯科医師や歯科衛生士の皆さんは気兼ねなくご連絡ください。

また、診療上、お悩みの症例がありましたら、ご相談などもお受けしています。

2名以上の希望者がおられましたら、どこでも伺います(交通費だけはご負担ください)。

希望される日や時間帯をいくつかご提示ください。

お問い合わせは以下まで

mmiyashin@outlook.jp

 

 

 

 

 

 

Labo M

小児の歯内療法、外傷と受傷歯の治療と

合併症への対応を教育・研究しています。

 (無料)

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小児の歯内療法、小児の外傷と受傷歯の治療と長期経過観察、合併症への対応

その他、小児歯科学全般に興味のある皆様に、講義や実習(「天然歯根管模型」使用)、治療指導。研究指導などをボランティアで行っております。

 特に研修中の歯科医師や歯科衛生士の皆さんは気兼ねなくご連絡ください。

また、診療上、お悩みの症例がありましたら、ご相談などもお受けしています。

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お問い合わせは以下まで

mmiyashin@outlook.jp

 

 

 

 

歯科同窓会講演会にて頂きました各種のご質問を拝見して

 

20211106

10月31日の東京医科歯科大学歯科同窓会講演会にて頂きました各種のご質問にお答えして見ました。

 小児の歯内療法や外傷治療については

クインテッセンス出版の「歯の外傷で小児が来院したら」

に記載してありますのでこちらもご参照ください。 

 治療薬等についてのご質問をいただきましたが、書いてこなかった治療法や材料の使用に関しては「現時点では適切だと確証がないので書いていない」

と解釈していただくと助かります。特に、「最新」といわれる薬剤・材料には、とかく「万能薬信仰」が生じやすいものです。「新しければ安全で有効」 であるとは限らないという点を再度ご確認お願いします。

十分な基礎研究情報で確認がとれたものや長い臨床での成績の蓄積が長所と限界を提示するまで、期待だけをふくらませて、臨床において人体実験を行うようなことにならないよう注意したいと思っています。

 書籍の内容を超えたより詳細についての説明をご希望な場合は、mmiyashin@outlook.jp

にお問い合わせください。

 

 

Q 歯髄炎で急患来院した方に、抜髄する時間がない場合の対応

A  Weriser仮封を行う と講演では申し上げました。 検索サイトでも情報が得られるでしょう。

食片が入らないよう、圧力をかけたくない露髄部分があるときは 小綿球を置いてから セメントで不完全い封鎖します。崩壊しはいけれども 圧力を抜く小さい穴が開いている必要があります。

自発痛があれば鎮痛薬を投薬します。

小児用は通常、アセトアミノフェンです。

小児の投与量は体重を基本にします。投与基準は各製品ごとに検索可能です。

打診違和感がある場合は根尖性歯周炎を併発している可能性があるので 抗菌薬を服用させます。

アモキシシリンなどが標準ですが アレルギーがある場合は 他の剤品を用います。

 

 

Q 小児におけるフッ素入り歯磨剤の1500ppmの使い方はどうあるべきか?

A  http://www.jspd.or.jp/contents/common/pdf/gakkai/info20181226.pdf

をご参照ください。

キーワードで検索し、学会などが出した検証された責任ある意見を参考にされてはいかがでしょうか。

 

Q 局所麻酔後の断髄歯髄の出血は少ないか?

 

A 局所麻酔を受けた歯の歯髄の脈波幅が半分程度になることは実験的に測定されています(上記書籍参照)が、臨床での断髄面に出血がなくなるとは考えにくいです。血管収縮剤が入っていない麻酔薬でも脈波幅は同じく下がっています。断髄面の出血所見の見方は、講演でおはなしし、上記書籍に書きましたことに相違はないでしょう。浸潤麻酔部位と歯髄は離れていますので、刺入部位のような貧血所見はないでしょう。もし、髄腔内麻酔をおこなったのであれば、血管収縮剤が歯髄に直接作用して止血することもあるでしょうが、この麻酔後は断髄適応ではありません。

 

Q 外傷骨折後の歯槽骨は瘢痕治癒をおこすか?

A 元通りの歯槽骨形態に完全に戻ることは、重症例であるほど、感染があったほど、困難になるように見えます。通常の骨折と同等かと思います。実験的な治癒所見については以下を参照ください。

Kuniomi N, Atsushi Oishi, Tomoki Uehara, Kanae Wada, Michiyo Miyashin: Healing after experimental luxation and interalveolar root fracture in immature rat teeth, Pediatr Dent J,27:128-136, 2017

 

 

Q 乳歯抜歯後の掻把について

 

A 乳歯抜歯後は掻把を最小限にするということが教科書の記載です。

  抜歯窩洞は滅菌生理食塩水で十分にあらうのがよいでしょう。患者さんには、塩味がするよー

と声をかけておきましょう。抜歯窩に永久歯が露出していることもあり得ますが、洗浄だけなら問題ないでしょう。不良肉芽や残根がなければ終了してよいと思います。

 乳歯を早期喪失部位の永久歯は、早期に放出する傾向がありますが、各条件によって差が出ます。

軟組織が瘢痕をつくった場合や、永久歯に形成障害が出ると萌出が遅れるリスクとなるでしょう。

したがって定期的にエックス線所見を観察して、健全側や平均的萌出時期とくらべます。通常、永久歯の歯根が2分の1が形成されると萌出が開始するといわれます。

 

 

Q 歯肉炎症の強い歯の歯垢を痛みを与えずに除去する方法について

 

A 小児は歯肉炎がおおく、急性炎を伴うものは少なくありません。

   通常のブラッシングで痛がるばあいは、丁寧にエキスカやスケーラーで歯肉に触れないように歯垢を除去します。完全除去が出来なければ 数日後に再度行い、ホームケアの達成度を確認します。

家庭では チャーターズ法で磨くよう保護者に伝えます。歯周病細菌を減らすための含嗽剤でうがいさせるか、いやがるならほぐした綿棒で塗ったり、歯ブラシにつけて塗布したりするよう指導します。ビタミンを十分とるように野菜を摂取させ、甘い飲料や砂糖の摂取を激減させ、夜更かしをさせずに早く寝かせることも指導します。

 

 

Q 子どもの歯の異常な着色について

 

A 甘い飲食物が多いか、清掃不良や口呼吸が合併する場合、黒色産生菌の増殖、粗造な歯面などが関与したと考えます。 これらを変えるための食事指導、清掃指導、耳鼻科受診を推奨することで対応します。除去するときやPMTCやパウダーフローで除去します。歯面はレジン系の修復を検討します。

 

Q
永久前歯の部分歯髄切断ではタービン(バーの説明はありませんでしたがおそらくダイヤモンドの円形バーかと思います)、乳歯の歯髄切断ではエンジンとスチールバーを使用しているということでした。自分もそうしてはいるのですが、同じ歯髄の切断なのにどうしてスピードもバーも違うのか、ふと疑問に思いました。何か理由やエビデンスがございますか?
回答

前歯のタービンは円柱状 #301などです。

臼歯は髄床底を傷つけてはいけないのでラウンドです。

回転スピードが速いほうが傷がきれいで治癒が良好になります。

Cvekの論文、Andreasenの教科書にあります。

だからタービンがべすと。

臼歯で低速回転で抜髄をふせぎ

最後の仕上げに正回転を用いるのも回転数を上げても 周囲を気付つけないためです。


Q
完全脱臼時に電話があった場合、受付のスタッフが、患児の牛乳アレルギーの確認をして指示を変えるよりも、とりあえず全員、牛乳に浸漬してきてもらい、牛乳アレルギーがあった場合には、医院で念入りに生食で洗うという方が、分かり易く簡便かと思うのですが危険でしょうか?

回答

生食は安全なものとは確証がないので徹底的にあらいたいなら HBSSだとおもいます。

生食が1時間だけ保存するのは安全だという程度で、ラップで包むのと同様です。

 

1時間以内に受診するならラップ

それ以上なら 安全性が不明ですが 先生のように対応するしかないことは起きていると思います。

報告がないのでわかりませんが、児のアレルギーの強さにもよるでしょう。

だから自身で再植する意味をいっぱんにすすめ HBSSを学校や園におくようすすめていますし 校医も持っていてよいのではおもっています

 

 

 

形成不全を持つ第一大臼歯について

 ー東京医科歯科大学歯科同窓会学術講演会におけるご質問にお答えしてー

形成不全を持つ第一大臼歯に遭遇された歯科医師は少なくないかと思います。

この柔らかい歯質をどのように扱うかは悩むところです。

特に冷刺激に違和感が出た後などではなおさらです。

 生活歯であり、打診違和感や温水違和感が出ていなければ、歯髄を保存する方向で

対応します。柔らかい歯質を切削除去するのではなく、AIPCと同じ考え方で、液化した部分だけを取り除いて被覆し、軟かい歯質の歯髄側に修復象牙質を育てることを期待します。接着可能な健全エナメル質を持った歯であれば、ここに接着を行って被覆します。健全歯質がなければ、バンドを適合させてこれを枠としてセメントやボンドフィル、スーパーボンドなどを内部に入れて被覆します。

2か月から6か月の間隔で、被覆材料を除去して、軟化歯質に液化部分が生じるならこれだけを除去して、再被覆します。通常、次第に硬化することがおおいので、硬化した歯質はう蝕検知液でう蝕の混在をチェックしてから最終修復を行います。できれば歯を形成しないほうが安全ですので バンドや既成金属冠を用いて、永久歯咬合完成まで1年に1回は修復物をとって診査します。不可逆性歯髄炎と診断されなければ、永久歯咬合完成後に修復を行います。

ただし、もしこれらの被覆に要するクリアランスが得られない場合は、矯正治療を応用して、咬合挙上も検討します。

 クインテッセンス出版の「歯の外傷で小児が来院したら」という本にも、形成不全歯、形態異常歯の修復法について書いております。参考にしてみてください。

小児の歯ぎしりについて

20211104

- 東京医科歯科大学歯科同窓会学術講演会におけるご質問にお答えしてー

 

 小児の歯ぎしりは、特に乳歯列においては生理的な咬合調整を意味します。それは、顎顔面各部位、各組織の成長発育がそれぞれ部位も時期、方向、速度がことなることから、最後は乳歯を咬耗させて、常に咬合機能を維持していると解釈されています。つまり、小児の顎顔面の発育の中で咬耗しながらも咬合を保全するのが乳歯の役割だといえるでしょう。また、永久歯への生え代わりにおいて、乳歯の咬耗がおきることは、永久歯咬合への移行を円滑にする仕組みの一つになっています。したがって、小児期の歯ぎしりには重要な生理的な意義があるといえましょう。また夜間の歯ぎしりだけが咬耗の原因ではないので、咬耗を観察した場合は、広く原因を検討する必要があります。対咬歯が修復されている場合、修復物が天然歯よりも硬い材料で、天然歯のほうが摩耗している場合もあります。特に、幼若永久歯が急速に咬耗する場合は、特に注意が必要です。冷水違和感などが出るリスクがあるので、インピーダンス測定を、APITなどを用いて行っておき、仮性露髄値である4以上が出た場合は、被覆することをお勧めします。

 臨床的に、歯の咬耗が強すぎて歯の痛みや露髄を生じた場合や、これらが予想される場合は、対応が必要になります。一方で、強い咬耗が生じる背景には、甘い食品や飲料、または酸性の食品・飲料の摂取習慣が関与していることがあるので、歯ぎしりのみに注目しすぎないことは重要です。これらの食品は、咬耗面にう蝕や脱灰を生じて咬耗面の陥凹や咬耗の亢進を招きます。

 露髄がない咬耗面への対応は、う蝕が併発していないか精査した後、接着性レジンを用い咬合干渉がない程度に修復します。使用する材料は、象牙質への接着力が強く、対合歯を咬耗させない修復材料としては、ボンドフィルSBやスーパーボンド、アイオノマーセメントなどが利用されます。一方、露髄が認められた場合は、歯内療法の原則に従って、治療を勧めます。このようなことが生じないように、小児は定期診査で歯科医療機関と付き合うことが、成長に伴う変化を比較し検知できる機会になるのでお勧めです。

 

 

小児の嘔吐の防ぎ方

20211103

10月31日の東京医科歯科大学歯科同窓会講演会にて頂きましたご質問にお答えして

 

Q  小児の嘔吐反射にどのように対応しますか?

 

A  「嘔吐」というサルトルの小説は有名ですね。生きる上の違和感が表現されているとでも申しましょうか。

さて、精神医学には、心因性嘔吐(神経性嘔吐)という病態があります。嘔吐の原因となる明らかな異常がなく,心理社会的なストレスが原因で嘔吐するものを示します。不安や緊張を伴う場面で発生することが多いのに,本人は心理的ストレスを自覚していない場合もあります。また,車の中で嘔吐してから車を見ただけで嘔吐するようになるなど,特定の場所や時間に症状が出現する「条件付け」が関係している場合もあるといわれます。

嘔吐は,脳(延髄)にある嘔吐中枢や隣接するchemoreceptor trigger zone(CTZ)への刺激によって発生しますが、心理社会的なストレスを上手く処理できないと,大脳につたわり不快な感情が誘因となって嘔吐中枢を刺激します。特に子どもの中枢神経系は未成熟なので,様々な刺激によって影響を受け,身体症状が発生しやすいと言われおり,嘔吐もその一つです。したがって、歯科診療に対して強い恐怖感や嫌悪感があると、それだけで児は嘔吐することになります。

したがって、心因性嘔吐をさけるためには、歯科診療が児にとって強いストレスにならないように工夫することです。不安、嫌悪、恐怖を感じにくくなるよう、歯科診療に関するプレパレーションや理解を促す活動が、重要になります。例えばTSDをしたり、モデリングをして、少しずつ誤解を解いて、自己達成感と自信をあたえ、その児に合った無理のない低い階段を少しずつ上らせるように、理解を深めてもらうことが大切です。診療現場が怖くもなく、いやな感じがしなくなった時点では、嘔吐が生じにくくなる、と期待できます。

もう一つは、口腔内の嘔吐反射の刺激受容体が刺激されて生じる嘔吐があります。歯科医療者にはこのほうが身近に思い浮かぶでしょう。ただし、食物を食べるときには、喉の奥に当たるにもかかわらず吐き気が生じないで飲み込めるのが通常なので、この点からも嘔吐反射は心理学的な原因が強いと推察されます。中でも、口呼吸が強いひとは、水が口に溢れると息ができなくなる感覚の陥りやすく、本人が「息が出来なくなるかも」という不安を生じて、嘔吐反射が強めであるという記載があります。口呼吸は不正咬合の原因にもなるので、鼻で息ができるか、耳鼻科で検査をうけてもらい、問題がなければ訓練を鼻呼吸を意識するよう指導するのも重要です。

鏡を見せる; 鏡を見ると歯科治療についての説明が具体的に腑に落ちる上、目からの情報量が増えて、反射を阻害する可能性があります。目からの情報は、ヒトが得る情報の96%に相当する量だそうです。目をつぶらないように声をかける必要はあります。

舌に塩を乗せる;口蓋など、受容体が多い場所に触れざるを得ない場合、舌に少量の塩を乗せて、「少し塩辛いですよ」と声をかけつつ処置を終わる方法。口腔内の刺激に対して、意識が集中するのを回避することができます。

ツボ押しを応用する; 鎖骨と鎖骨の間のくぼみにある「天突(てんとつ)」というツボを指で数秒間押し続けることで、嘔吐反射が和らぐことがあるそうです。

https://twitter.com/kita20jou/status/881765255910572034?lang=gl

 

根未完成歯へのポストコアはどうする?

Q; 根未完成歯のアペキシフィケーション後に根管充填を行いました。まだ、9歳で永久歯咬合は未完成です。(第二大臼歯の咬合関係が確立していません) 今後のポストコアはどうしたら良いでしょうか。

 

A; 現状でポストコアを立てることはお勧めしません。またぶつける可能性がある年齢であることと、破折するのはポストの最深部よりも根尖寄りをふくむ歯冠歯根破折になる危険性があり、保存不可能になりかねないからです。咬合関係や、歯冠と歯肉との位置関係も変化が続く時期でもありますから、最終的で長期的に安定した形態を作るのは、18歳以上(身長増加停止後)をすすめてきました。

現在の年齢においては アクセス窩洞根未完成歯に対し、スーパーボンドを接着性レジンとした状態で、フロアブルCR充填を行います。この処置を行っている場合、外力による破折が起きても歯冠部に限局して、歯根側の破折が浅いことを、ウシの歯を用いた実験によって確認してあります。(臨床例でもそのパターンでの破折が観察されています。)

宮新美智世 他. 象牙質接着システムとレジンによる修復が根管治療後の幼若永久歯の破折に与える影響に関する実験的研究. 小児歯科学雑誌 36 (5): 777-789, 1998

上下顎の咬合接触は極力、本人の歯質内にとどめて、CRの中に設定しないことが推奨されています。(上記研究において、実験的には、CRに外力をくわえると、本来の歯面に外力をくわえた場合より、少ない外力で 破折が生じました) また、隣接する切歯より咬合負担が少なめにすることを薦めます。

咬合関係は、

① 咬頭嵌合位においては、咬合紙1枚が軽く抜ける程度、または対側同名歯の咬合紙印記面積より少なめにする。

②側方ならびに前方滑走においては、最小限のガイド面積とする。念のため唇側に指をあてて、滑走時の動揺が、健全歯よりも少ないことを確認しておく。

③咬合接触は極力、本人の歯質内にとどめて、CRの中に設定しない。

 

その他、醜いアヒルの子の時期に相当する年齢の患者さんですから、これから正中離開が改善する時期に当たりますが、注意すべき点があります。それは、外傷受傷既往歯は 、歯槽骨を喪失している症例が多いことが原因しているのか、長期的には以下の点に注意を要します。

①受傷している頻度が高い上顎中切歯は唇側に移動するリスクをもっていること。

②側切歯は口蓋近心側に転位してくるリスクがあること。

もし当該歯の動揺が亢進したり、2番が舌側に回り込むことがみえたら、舌側歯頚部に矯正後保定のような長期用固定を行う場合もあると推察しています。