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歯の外傷治療と小児の歯内療法にかかわる本日の問いと仮説的推論  宮新 美智世

小児の歯ぎしりについて

20211104

- 東京医科歯科大学歯科同窓会学術講演会におけるご質問にお答えしてー

 

 小児の歯ぎしりは、特に乳歯列においては生理的な咬合調整を意味します。それは、顎顔面各部位、各組織の成長発育がそれぞれ部位も時期、方向、速度がことなることから、最後は乳歯を咬耗させて、常に咬合機能を維持していると解釈されています。つまり、小児の顎顔面の発育の中で咬耗しながらも咬合を保全するのが乳歯の役割だといえるでしょう。また、永久歯への生え代わりにおいて、乳歯の咬耗がおきることは、永久歯咬合への移行を円滑にする仕組みの一つになっています。したがって、小児期の歯ぎしりには重要な生理的な意義があるといえましょう。また夜間の歯ぎしりだけが咬耗の原因ではないので、咬耗を観察した場合は、広く原因を検討する必要があります。対咬歯が修復されている場合、修復物が天然歯よりも硬い材料で、天然歯のほうが摩耗している場合もあります。特に、幼若永久歯が急速に咬耗する場合は、特に注意が必要です。冷水違和感などが出るリスクがあるので、インピーダンス測定を、APITなどを用いて行っておき、仮性露髄値である4以上が出た場合は、被覆することをお勧めします。

 臨床的に、歯の咬耗が強すぎて歯の痛みや露髄を生じた場合や、これらが予想される場合は、対応が必要になります。一方で、強い咬耗が生じる背景には、甘い食品や飲料、または酸性の食品・飲料の摂取習慣が関与していることがあるので、歯ぎしりのみに注目しすぎないことは重要です。これらの食品は、咬耗面にう蝕や脱灰を生じて咬耗面の陥凹や咬耗の亢進を招きます。

 露髄がない咬耗面への対応は、う蝕が併発していないか精査した後、接着性レジンを用い咬合干渉がない程度に修復します。使用する材料は、象牙質への接着力が強く、対合歯を咬耗させない修復材料としては、ボンドフィルSBやスーパーボンド、アイオノマーセメントなどが利用されます。一方、露髄が認められた場合は、歯内療法の原則に従って、治療を勧めます。このようなことが生じないように、小児は定期診査で歯科医療機関と付き合うことが、成長に伴う変化を比較し検知できる機会になるのでお勧めです。